プロテインが体に悪い、危険だからやめろという警鐘が鳴らされていることを耳にしました。
調べてみると、腎臓の病気になりやすくなる、人工のアミノ酸では効果がない、など危険だからおすすめしないというような声が少なからずあるようです。
何事も過ぎたるはなお及ばざるが如し、タンパク質を取りすぎるのは確かに問題がありそうな気もします。
果たして本当に健康に悪いのか?
それを論文をもとに検証してみます。
プロテインが危険という説は本当?
プロテインをよく飲んでいる人からしたら、「危険って何が?」となるかもしれません。
でも、プロテインを飲んだことがない人から見れば、あの粉の感じが人工的で筋肉を無理に肥大させる薬物のような悪い印象を抱くのかもしれません。
[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]私も始めは健康に良さそうな感じはしませんでしたね[/chat]
ですから、個人的にはプロテインの安全性・危険性が気になるのは理解できるわけです。
[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]一体どこが危険だと思われているの?[/chat]
実際に指摘されている危険性としては
- 腎臓への負担・損傷 (蛋白摂取増加で尿をろ過する量がふえるから)
- 肝臓への負担・損傷 (タンパク質代謝による影響)
- 骨粗鬆症 (蛋白過剰摂取による尿の酸性傾向による骨からのカルシウム溶出)
- 人工的であるがゆえの危険性
があります。腎臓や肝臓に負担がかかるという目線で言えば、たしかにタンパク質摂取量が多くなれば、負担はかかると予想できます。しかし、これが直接病気の原因となるかは別であり、きちんと調べる必要があるでしょう。
プロテインは粉なので人工的に作られた感じがするかもしれません。実際にはとこからが人工と言えるのかは難しい所ですが、最も代表的なプロテイン「ホエイプロテイン」は牛乳の上澄み液(チーズ製造の時にでる液体成分)をろ過、余分なものを除去して乾燥して得られた粉末です。化学合成はしていないです。
[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]もしもプロテイン、ペプチドを化学合成してたらコストがヤバそうですね[/chat]
すでに知られているプロテイン摂取による副作用は「下痢」
すでに知られている副作用としては「下痢」があります。この原因は「乳糖」です。牛乳を飲むとお腹を壊す人は「乳糖不耐症」といって結構たくさんいます。ホエイプロテインのもとは牛乳なので、精製度合いによって多少の乳糖が混入します。
したがって、乳糖不耐症の人は下痢になる可能性があるため乳糖が少なく、タンパク質の割合が大きいアイソレートタイプのホエイプロテイン(より精製されたプロテイン)や植物性プロテインを使ったほうが良いです。
このように因果がはっきりしているものもあります。一方で、腎臓病、肝臓病、骨粗鬆症に対するプロテインの危険性を調べた論文を調べてみました。
医師とか研究者などの専門家の言うことほど注意すべき
何でもかんでも論文で調べれば良いとか、論文に載っているのだから正しいというわけではありませんが「私はそう思う」とか「勝手な思い込み」などは論文と比べればよっぽど信頼性の低い情報です。実体験すら無いものもあります。
プロテインが腎臓に悪影響を与えるのか?
結論から言うとタンパク質摂取によって腎臓が損傷したり、腎臓病を引き起こすという証拠は現状見つかっていません。
ですから、飲んでもOKです。しかし、摂取タンパク質量が多いと腎臓の処理が増えるのは事実です。すでに腎臓になんらかの不調を訴えている人であれば、腎臓への負担が増えるのでプロテインは摂るべきではないでしょう。
腎機能と摂取タンパク質の関係を調べた論文
腎機能に対してタンパク質の摂取がどのように影響を与えるのか?をまとめたレビューがあります。結論としては「腎臓に疾患を抱える人では高タンパク質は避けたほうが良いが、正常な人であれば、高タンパク質摂取と腎臓病の発症や腎機能の低下などを示す確かな証拠は見つかっていない」です。
William F Martin, et al, “Dietary protein intake and renal function” Nutr. Metab. (lond).2005, 2:25. [IF: 3.6]
高タンパク食が腎臓に負担を与えるのはタンパク質摂取の増加によって増えた尿素・クレアチニンなどの代謝副産物を尿中に排泄するためにより多くの血液を濾過するので腎臓に負担がかかります1)。
実際に慢性腎機能病(CKD)の患者は腎臓への負担を低減するために塩分、糖分、タンパク質を制限しています。2018年Plos Oneに投稿されたメタアナリシスでは、腎不全及び末期の腎疾患に対してはタンパク質摂取が病気進行のリスクとなる可能性があることを示唆しています(一方で腎疾患による死亡リスクを下げる明確な証拠は見つからなかったとしています)2)。
1) Metges CC, Barth CA: Metabolic consequences of a high dietary-protein intake in adulthood: assessment of the available evidence. J Nutr. 2000, 130 (4): 886-889.
2) Bingjuan Yan et al, Plos One, 2018; 13(11)
したがって、健康な人はタンパク質摂取量を制限する必要は無いです。
肝臓に対する影響
「健康な人がタンパクを摂取しすぎると肝臓がやられる」と言われますが、それを示す科学的な証拠はあがっていません。そのためタンパク質を摂取して大丈夫です。
一方で肝硬変などの肝臓疾患を抱えている方は制限したほうがよいです。
肝臓はタンパク質を代謝によって生成するアンモニアを解毒する作用があり、タンパク質摂取量が増加すれば、それだけ肝臓に掛かる負担も大きくなります。肝臓の機能が落ちていれば、有毒なアンモニアが解毒されずに残って悪さをする可能性があります。
骨粗鬆症は起こるの?
タンパク質摂取によって尿が酸性になるという昔の研究から、骨のカルシウムを放出することで中和しようと試みることから骨がもろくなる可能性があると想像されていたようです。しかし、現在はカルシウム溶出が起きてもカルシウムの吸収効率が上昇するのでカルシウム損失による骨粗鬆症は起こりにくいと考えられています。
むしろタンパク質摂取によって骨がより健康になるとも言われています。
[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]結局タンパク質はとっても問題ないということですね。ただし肝臓や腎臓に病気を抱えるひとは制限したほうが良いというのが結論です。[/chat]