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コハク酸でダイエット?貝の旨味成分で痩せられるのか?

コハク酸でダイエット

「摂取エネルギー」が「消費エネルギー」を上回ると太り始めます。

実は運動をしていなくても、生きているだけでエネルギーを消費しています。消費エネルギーを大きくすることができれば太りにくい体になります。

この平常時でのエネルギー消費を高める方法として「コハク酸」が使えるのではないか?という研究報告がNature誌に報告されました。

本当に効果があるのでしょうか?

コハク酸がダイエットに効く?

英国ネイチャー誌である論文が報告されました。

Accumulation of succinate controls activation of adipose tissue thermogenesis

Evanna L. Mills, et al, Nature, 560, 102-106, (2018)

論文では「コハク酸」という化学物質を肥満マウスの飲料水に混ぜて与えると、消費エネルギー量が多くなり、体重減少が確認されました。ヒトでのダイエット効果については報告されていませんが、ダイエットに有効かもしれません。詳しくは以下を御覧ください。

コハク酸の構造は下のような構造です。

コハク酸 構造

コハク酸はアサリなどの貝類に含まれる旨味成分の一つで、2つのカルボン酸(COOH)を含むジカルボン酸です。

こめやん

有名なうま味成分のグルタミン酸ナトリウムと構造が似ている?

そのとおりで、構造をみると代表的な旨味成分であるアミノ酸のグルタミン酸ナトリウムと非常によく似た構造をしています。だから旨味を感じるのかもしれませんね。

旨味成分の構造

話を本題に戻します。なぜコハク酸を摂取するとエネルギー消費量が増えるのでしょうか?これはエネルギー消費に関わる褐色脂肪細胞と関係があります。


コハク酸が褐色脂肪細胞のエネルギー消費を高める

私達は体温が常に36℃前後に保たれている「恒温動物」です。この体温維持にはエネルギーが必要です。

こめやん

寒さで震えるのはエネルギーを消費して熱を発生させてるんですね

基礎代謝量が夏よりも冬のほうが5~10%程度高いといわれているのもそのためです。

寒くなくてもエネルギー消費を増やすことができれば太りにくくなりますね。

生物には脂肪のエネルギーを熱に変換する「褐色脂肪細胞」という細胞が存在しています。この褐色細胞の消費エネルギーを増やす方法として「コハク酸」の摂取が有効であるようです。

褐色脂肪細胞って何?

脂肪細胞には「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」の2種類があります。

どちらも細胞内に中性脂肪を蓄えている細胞ですが、役割が異なっています。

白色脂肪細胞は、エネルギー不足に陥った時に中性脂肪を脂肪酸として放出してエネルギー不足をまかないます。

褐色脂肪細胞は、Brown Adipose Tissue;BATと略されて呼ばれています。褐色脂肪細胞の特徴は中性脂肪が分解して出てきた脂肪酸の大部分を細胞内で分解して熱に変換します

こめやん

白色脂肪細胞は脂質を蓄える機能で、褐色脂肪細胞は脂質を熱に変える機能があるんですね!

褐色脂肪細胞はミトコンドリアが多い脂肪細胞で鉄に由来する褐色を呈しています。褐色脂肪細胞のミトコンドリアにはUCP1(分子脱共役タンパク質1)が発現しています。UCP1はミトコンドリアの酸化的リン酸化を脱共役させる作用があり、これによってATP合成ではなく熱産生にエネルギーが回されます

こめやん

褐色脂肪細胞のミトコンドリアはATPを作り出すのではなく熱を作り出すということですね

[jin-iconbox07]ATPはエネルギーの保存源で1molあたり7.3kcalあります。[/jin-iconbox07]

褐色脂肪細胞はコハク酸を吸収して、細胞内のミトコンドリアに代謝されると活性酸素が発生し、UCP1が活性化され熱産生を増加させることをE. Chouchaniらが発見しました。

研究結果とは?

これまで、褐色脂肪細胞を活性化させる方法として寒冷刺激などがありましたが、この研究では初めてコハク酸による褐色脂肪細胞の熱産生活性化のメカニズムを解明しました。

実験では、食餌性肥満マウスにコハク酸を添加した飲料水を与えると体重の増加が抑えられ、体重減少が認められさらに、耐糖能が改善した結果が得られました。

これらの効果が褐色脂肪細胞による熱産生によるものであることを確かめています。

[jin-iconbox07]食餌性肥満モデルって?

食餌性肥満モデル(Diet-induced obecity model)は高脂肪食や高エネルギー食を摂取させて肥満にさせたモデル動物です。マウスやラット、犬などがあります。このモデルの注意点は餌の摂取量や期間、行動など個体差、飼育環境によってばらつきが生じることです。[/jin-iconbox07]

こめやん

特に成人のヒトでは褐色脂肪細胞は殆どないって聞いたけど?

確かに乳幼児などには首や脇などに存在する褐色脂肪細胞は成人とともに失わていくと言われていましたが、最近の研究では成人でも活性のある褐色脂肪細胞様の細胞が存在していることが明らかになっています。

ヒトと同じくイヌでは成人になると褐色脂肪細胞が消失すると言われていますが、寒冷刺激やβ3作動薬を使うと白色脂肪細胞に褐色脂肪細胞がもつUCP1が発現することが発見されてから、同様にヒト成人でも足裏の冷却刺激を2時間行うと肩や背骨周りを中心にUCP1陽性の脂肪細胞が確認されています。

こめやん

つまり、ヒトでも褐色脂肪細胞様の細胞は存在しているということですね!

寒冷刺激によって生じるUCP1陽性細胞はコハク酸摂取によって熱産生が増加する可能性は十分あります。

ヒトのダイエットに有効かどうかは続報を見てみないとなんとも言えませんね。

寒冷刺激やノルアドレナリンによる刺激によって生まれる褐色脂肪細胞様の細胞(UCP1陽性細胞)をベージュ細胞あるいはブライト細胞と呼びます。

コハク酸の毒性は食品添加物として許可されている程度には安全のようです。

1)島岡章, et al. “基礎代謝の季節変動について.” 日本生気象学会雑誌 24.1 (1987): 3-8.

2)食餌性肥満マウスについて(英語版wikipedia)

3)斉藤昌之. 褐色脂肪組織でのエネルギー消費と食品成分による活性化. 化学と生物, 2012, 50.1: 23-29.

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