HMBは筋トレサプリメントに興味がある方なら知らない人はいないほど有名な栄養成分です。
このHMBが効果があるのか?ないのか?は良く話題になっていますよね!
トレーニングをやっている人であれば、HMB、クレアチン、BCAAあたりはプロテインとともによく使っているのではないでしょうか?
こめやん
HMBは有名な成分なので結構たくさん研究がやられていますが、研究によって効果があるとか、無いとか、バラバラなんですね。
このように研究によって効果の有り・無しが違うのは条件が違うことが原因です。
- 年齢
- トレーニング・スポーツ経験の有無
- アウトカムの違い(筋肥大、筋力、筋横断面積、疲労、持久力)
などが違うと効果が出やすかったり出にくかったりするわけです。
こめやん
そこで、本記事では最新の論文からどんな人・目的だったらHMBは効果があるのか?無いのか?を調べました。
HMBとは?
HMBの基礎
早速ですが、基本となるHMBという物質の正体から見ていきましょう。
こめやん
HMBはβ-ヒドロキシ-β-メチルブチレートが正式名称です。このHMBはアミノ酸のロイシンから作られます。
ロイシンは分岐型アミノ酸(BCAA)の一種でこれが体内で代謝されると3ーヒドロキシイソ吉草酸 (HMB)になります。
こめやん
確かにHMBはロイシンの代謝物なのですが、体内のロイシンの5-10%くらいしかHMBに変換しないので、外部からHMBを摂取したほうが効率が良いということです。
一日にHMBは1.2~2.4g程度摂取することが望ましいとされています。
特に筋肉量と筋力向上を目指す場合は一日3.0 gが好ましいと言われています。
摂取の方法としては、一日の起床時、トレーニング直後、就寝前の3回に分けて摂取するほうが効果が高いと言われています。
HMBの効果
HMBには筋肥大効果の増強と筋肉が痩せるのを予防する効果があると言われています。
HMBの効果は実際にあるのか?という点に関して結論から言うと「一部の効果に関しては有効そうだ」という結果がでています。
こめやん
あでの
HMB摂取による効果には
- 筋肉量の増加 (細胞レベルでの筋合成の促進)
- 筋力の増加
- 筋肉量および筋力の低下抑制(運動不足や加齢による)
などがあります。
HMBのメカニズム
筋肉は同化(合成)と異化(分解)が競合していてバランスをうまくとっています。異化が優位になれば筋肉は萎縮していきます。
こめやん
HMBはこの同化と異化のバランスを変化させて同化を促進させる作用があります。
mTOR経路によるタンパク質合成の促進
mTOR (エムトア)はアミノ酸やグルコース、成長因子、ホルモン、ストレスによって活性化して、細胞の増殖やタンパク質合成を制御するセリン/スレオニンキナーゼ(リン酸化酵素)です。
HMBはmTORc1を活性化させることによって筋合成を促進させる作用があると考えられています。
ユビキチン経路の抑制によるタンパク質分解の抑制
ユビキチンはタンパク質の分解に関わるタンパク質群です。つまり筋肉の分解に関わるものです。HMBはこのユビキチン-プロテアソームの働き 1, 2)やオートファジーを阻害 3)することによって筋肉の分解を抑制して筋肉の減少を抑制しているという報告がされています。
- Eley H.L., et al Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008;295:E1417–E1426
- Mirza K., et al Nutrition. 2014;30:807–813.
- Giron M., et al PLoS One. 2015;10:e0117520.
その他予想されているメカニズム
HMBが含まれる食物
HMBは食品中にはあまり含まれていません。
比較的多い食品としては、かぼちゃ、アボカド、カリフラワー、アスパラ、チーズ、グレープフルーツなどがありますがどれも一食分1mg以下の量しか含まれていないため有用ではないです。HMBを摂取したいのならばサプリメントを利用するのがよいでしょう。
カルシウム型とフリー型の効果の違い
HMBにはカルシウム塩型とフリーアシッド型の2種類があります。フリーアシッド型のHMBのほうが30分後の血液中のHMB濃度が高いという報告がありました(ヒト&マウス)。しかし、HMB-Caでも血症最大濃度は60分後でその後も高いレベルを維持していることから、効果についてはどちらも同等であることが示されています。
販売されているHMBはカルシウム塩型のほうが多いようですが、違いには敏感にならなくても良さそうです。
こめやん
HMBの毒性や副作用 ハゲるって本当?
HMBの毒性・副作用はほとんど無いとされています。
体内ではアミノ酸として普通に摂取するロイシンからHMBが作られていることからも安全性は高いと考えられます。
しかし、多少の副作用などは起こりえます。なぜなら、体内のHMB量は少ないので大量に摂取したHMBが体に悪さをする可能性があります。
例えば、HMBによって筋肉の分解が抑えられると体内で必要なアミノ酸が供給されなくなる可能性があります。
こめやん
一応、これまでに報告されてきた10以上の論文では人間および動物試験でも副作用は確認されてません。
少なくとも重大な副作用などはないと考えて良いでしょう。でしょう。動物試験では成人男性換算で450g/日ほどの量を摂取しても安全であることが確認されています(もちろん種差はある)。
ちまたではHMB摂取によってハゲるという噂が流れているようですが、このような副作用は報告されていません。
こめやん
HMB摂取によって男性ホルモン「テストステロン」の分泌が亢進するからという理由のようですが、HMB摂取によってテストステロン値が上昇する確かな証拠はありません。また、脱毛症が起こるという副作用は報告されていません。
HMBによってハゲることはなさそうなので安心してください。
一部のサプリの口コミではHMB摂取によって下痢が起きたという報告が見られます。これはもしかしたらHMBサプリ中に含まれる甘味料によるものの可能性があります。糖分を避けるための甘味料が原因かもしれません。
こめやん
論文では、HMB摂取によって下痢が少なくなったというデータも出ています1)。外国人のデータなので日本人とは違うのかもしれませんがHMBによる問題では無いようです。
こめやん
また、安価すぎるサプリメントだと偽造品だったり品質の悪い商品があります。信頼のできるブランドのものを購入しましょう。
HMBのサプリを変えたら下痢にならなくなったという人もいるのでもし下痢になったという人がいれば別のサプリを試してみると良いかもしれません。
1) Nissen, S., et al. J. Nutr. 130.8 (2000): 1937-1945.
HMBの副作用まとめ
1. HMBの安全性は高く、少なくとも重大な副作用は無い
2. HMBでハゲるかどうか調べた研究は無い。テストステロン説もあるが、HMBでテストステロンが上昇する根拠は確認されていない
3. HMBで下痢の副作用は確認されていない。おそらくカルシウム摂取や甘味料の摂取によるものだと考えられる。
HMBの効果があるとする論文
研究例1:ランダム化比較試験 (体組成、筋力、ホルモン変化)
Krzysztof Durkalec-Michalski, et al Nutrients. 2017 Jul; 9(7): 753.
戦闘系スポーツ選手に対して12週間のHMB補給を行った結果です
- 雑誌:Nutrients, IF: 4.171, EF: 0.04714, Rank: 1471
- 研究デザイン:無作為化クロスオーバー二重盲検試験
- 目的:戦闘スポーツ(レスリングや柔道など)選手の運動パフォーマンスにHMBが与える影響、体組成変化、血中ホルモンレベルの変化を調べる
- 対象:高度な訓練を受けたスポーツ選手42人の男性 (レスラー、柔道、ブラジル柔術の選手) 年齢は22.8±6.1、体重は81.2±12.8 kg、身長は179±6 cm、スポーツトレーニングの経験は7.3±3.7年、実験中はいつもどおりの生活を行い、提供したモノ以外のエルゴジェニックエイドを食事や薬から摂取しないように指導した。
- 比較:プラセボ群との比較。クロスオーバー試験を行う
- 実験内容:HMB1g相当のHMB-Ca1.25gを投与、プラセボはマルトデキストリン。を一日3回(起床後、トレ後、睡眠前)。10日間のウォッシュアウト後にクロスオーバー試験を実施する。エルゴメーターでの運動を午前中に行う。
- 評価項目:テスト前とテスト後に評価を行い、有酸素・無酸素運動能力、クレアチンキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、テストステロン、コルチゾール、乳酸レベルの解析、脂肪量を測定した。
- 成果:プラセボと比較して除脂肪量が増加(p=0.049)、脂肪量が減少(p=0.016)した。Time to reach ventilatory threshold (p<0.0001), threshold load (p=0.017), threshold HR (p < 0.0001), 無酸素最大パワー (p=0.005), 平均パワー (p =0.029), 最大速度 (p <0.001)、運動後の乳酸濃度 (p<0.0001)
- 結論:体脂肪の有意な減少、無酸素運動における筋力、乳酸濃度の増加が見られた。一方で、血中の生化学的マーカー、CK、乳酸デヒドロゲナーゼ、テストステロン、コルチゾールなどの有意な変化は起こさない。
- 信頼性:査読の有、二重盲検、バイアス(高度なスポーツ経験者)、体組成分析法の信頼性(生体電気インピーダンス測定法の限界)、
上記の研究では、闘技系スポーツの経験者におけるHMBの効果を調べるランダム化比較試験を行っています。その結果、脂肪量の減少と筋力などが有意に上昇した結果が得られていますが、血中テストステロンなどの生化学マーカーには有意差はありませんでした。
こめやん
研究例2 メタアナリシス (筋力と筋肉量について)
- 最低3週間以上の間にレジスタンストレーニングを週2回以上実施したもの
- 査読あり英語論文、フルペーパー
- 無作為化プラセボ対照試験のみ
- 除脂肪体重(LBM)の評価を行ったもの
- 成人18歳以上、男女や運動歴のスクリーニングはなし
- クレアチン(n=18), HMB(n=9)
こめやん
adeno
こめやん
研究例3: 高齢者の筋力と筋量減少の予防効果 (システマティックレビュー&メタアナリシス)
高齢、運動不足になると筋肉量は減少していきます。40歳以降は1年に1%程度のペースで筋肉が減少すると言われています。
高齢者にとっての筋肉減少は転倒と怪我が起こりやすく、寝たきりを増やすなど深刻な問題です。この高齢者の筋肉減少にHMBの効果があるかどうかを調べた研究となります。
- 65歳以上
- 体組成変化評価を行ったもの
- 2014年までの研究
- ランダム化比較試験のみ
- 最低8週間以上
- フルペーパー
- 投与量2~3g
結果: 7つのランダム化比較試験が基準に合格し、それらを分析した結果、有意な筋肉量の増加を示しました(352g)。
こめやん
HMBの効果がないとする論文
研究例1 トレーニングを受けた競技選手の体力と体組成に対する影響ー無作為化比較対照試験のメタ分析
Sanchez-Martinez, Javier, et al. “Effects of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on strength and body composition in trained and competitive athletes: A meta-analysis of randomized controlled trials.” Journal of science and medicine in sport 21.7 (2018): 727-735.
JSAMS IF: 3.623 EF: 0.01183
- 対象:トレーニングを受けたスポーツ選手
- 目的:HMBの筋力と体組成に対する影響のメタ分析
- アウトカム:ベンチ・レッグプレスの強度(筋力)、除脂肪体重(体組成)、脂肪量、体重
- 対象論文:無作為化比較対照試験、
- 結論:有意差は無い
最新のメタ分析としてしばしば引用されるのがこのJSAMS誌で投稿されたメタ分析です。このメタ分析ではHMB摂取による筋力および体組成の変化に統計的な有意差は見いだされませんでした。
注意点が必要なのは対象者が日常的にトレーニングを受けているスポーツ選手であることです。他の論文でもHMBで効果が無いとする論文はよくトレーニングを受けたスポーツ選手などに限定されていることが多いです。日常的なトレーニングを受けていない人は完全にはあてはまりません。
研究例2 ランダム化比較試験でHMBはレジスタンストレーニングによるパフォーマンスと筋肥大を増加させる効果は確認されなかった
Teixeira, Filipe J., et al. “Leucine Metabolites Do Not Enhance Training-induced Performance or Muscle Thickness.” Medicine and science in sports and exercise 51.1 (2019): 56-64.
IF:4.478,EF:0.029
- 対象:成人男性
- 目的:HMB及びHICAの筋トレに対する効果を調べる
- 研究デザイン:二重盲検ランダム化比較試験
- 期間:8週、週3回の筋トレ(80~80%RM)
- アウトカム:ベンチプレスとスクワットの1RM、筋肉の厚さ等、血中CK、成長ホルモン、テストステロンレベル等
- 結論:若い成人の筋肉肥大やパフォーマンス向上は期待できない
スポーツ歴は定かではありませんが、こちらの研究ではHMB摂取による筋力上昇や筋肥大効果は確認されませんでした。
病気への効果は?
病気が原因の体重減少、筋肉量・筋力減少を防ぐ効果があるとしてHMBが期待されています。指摘されている病気には
- がん
- リウマチ性悪液質
- 筋ジストロフィー
- サルコペニア
- HIV感染
- 病気が原因のねたきり
が原因でおこる筋力低下や筋肉量低下に関する報告があります。それぞれの病気が引き起こす筋力低下や筋肉量低下に効果があることを示す研究もありますが、どの程度効果があるかは不明です。
結論
HMBの効果は全く無いとは言えず、筋力や筋肉量などの増強、筋肉減少の抑制などの効果が確認されているが、効果はわずかで基本的にトレーニングを行うことが前提。クレアチンやプロテインと組み合わせるより効果が実感できるかもしれない。
こめやん
adeno
結局トレーニングが最高のソリューションですね